高級な硯(すずり)は、書道をより豊かに楽しむことができるアイテム。
硯には素材や生産地が違う製品が豊富にあり、選ぶ際に迷いますよね。美しい文字を書くには、高い機能性や耐久性を備えた良い硯を選びたいものです。
今回は、高級な硯の選び方のポイントと、おすすめの10選をご紹介します。自分の好みや用途に合った、最適な硯を見つけてみてくださいね。
高級な硯(すずり)と普通の硯の違い
高級な硯は、一般的な硯と比較して、実用性・耐久性などに違いがあります。
小学校などの習字の授業で使う硯は、プラスチックやセラミックなど軽い素材で作られているものが多いもの。しかし、高級な硯は、産地や石の品質にこだわった天然石で作られているのが特徴です。
高級な硯は、硯の性質に合った石を使うため、生産年代・石の品質にこだわっています。希少性が高く骨董品として価値があるため、高い値段でもコレクションとして集める人も多いですよ。
高級な硯(すずり)の選び方7つ
ここでは、高級な硯(すずり)の選び方を7つご紹介します。
(1)硯の大きさで選ぶ
硯は、大きい筆・小さい筆など使用する筆や用途によって、硯の大きさを選ぶのがおすすめです。
硯には大きさが違うものがあり、書く文字の大きさなどによって向き・不向きが多少なりともあります。
たとえば、書き初めなど大きい筆を使う場合は、墨液がたっぷり入るサイズの大きい硯が適しています。また、小さい筆を使う際はそこまで大きなサイズ必要なく、持ち運びに優れたコンパクトなものを選ぶと便利ですよ。
硯の大きさを表す単位は、「吋(いんち)」といいます。以下で、主な用途と適したサイズと吋について表にしたので、参考にしてみてくださいね。
大きさ | サイズ | 用途 |
---|---|---|
3~5吋 | 7.5cm~12.5cm | かな書道 |
6~7吋 | 3cm~17.5cm | 半紙サイズの漢字や大型のかな書道 |
8~10吋 | 16cm~25cm) | 大型の漢字(書き初めなど) |
表の出典:書道入門
(2)使う墨の種類で選ぶ
墨の種類は、液体の墨と固形の墨の2種類あります。墨の種類に合ったものを選ぶと、それぞれの特徴をいかすことができますよ。
固形の墨をすって使う際は、硯の表面に鋒鋩(ほうぼう)と呼ばれるやすりがあるものがおすすめです。
鋒鋩とは、硯の表面に見えない大きさの凹凸のことです。この鋒鋩の鋭さや粗さなどの状態によって、墨の出来が変化する重要な役割を果たしています。
一方、液体の墨(墨汁)を使う際は、プラスチックやセラミック製の硯がおすすめ。墨を削る機能はないですが、軽量で持ち運びに便利です。落としても割れたり怪我をする心配もないため、子ども用にもおすすめですよ。
(3)日本製・中国製で選ぶ
硯には、日本で作られた和硯(わけん)と、中国で作られた唐硯(とうけん)の2種類があります。
日本製と中国製の硯は、構造や機能に大差がある訳ではありませんが、原料となる石の種類が異なります。同じ国の硯でも、地域によって採取できる石の色や形などが違うため、異なる魅力がありますよ。
和硯は、落ち着いたきれいな色やデザインでなめらかな硯が多いのが特徴。和硯は、赤間硯(あかますずり)・雄勝硯(おがつすずり)・土佐硯(とさすずり)・雨畑硯(はめはたすずり)などが有名です。
中でも赤間硯と雄勝硯は、奉納品として献上された歴史もあり、長年伝統工芸品として親しまれていますよ。
唐硯は、華やかな模様や形のデザインが多いのが特徴。唐硯の中では、端渓硯(たんけいけん)・歙州硯(きょうじゅうけん)・澄泥硯(しょうでいけん)などが有名です。値段も安いものから高価なものまで幅広く、観賞用としても人気がありますよ。
(4)硯の素材で選ぶ
素材 | おすすめの用途 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
石 | ・本格的な書道作品 ・墨絵 | ・発色が良い墨をすれる ・する音が楽しめる | ・鋒鋩(ほうぼう)のメンテナンスが必要 ・重い |
プラスチック | ・初心者の書道の練習用 ・子どもの学校用 | ・軽量で持ち運びやすい ・割れにくい・お手入れしやすい | ・鋒鋩がないため、固形の墨がすれない |
硯は、主に石製とプラスチック製の2種類があります。
石製は、固形の墨から好みの墨をするところから始まる本格派。そのため、本格的な書道作品や墨絵などに適していますよ。
プラスチック製は、墨汁を使って手軽に書道を楽しむことができるため、初心者の練習用や子どもの学校用におすすめです。軽量で持ち運びにも便利で、お手入れもしやすいのが嬉しいですね。
(5)硯の色やデザインで選ぶ
硯の色・形・彫刻には、さまざまな種類があります。硯に見られる模様(石の性質)によっては、濃い色の墨をする時間を短くできるものや、逆に墨をするのを妨げてしまうものがあるため、注意してくださいね。
例えば、中国産の硯には端渓硯(たんけいけん)・歙州硯(きょうじゅうけん)という種類があります。
端渓硯で使われる石は、硬度が低さ・粒度が細かさ・吸水性と親水性の低さが特徴です。そのため、「墨の発色・伸びがいい」「墨を早くすれる」などといわれています。
歙州硯は石の模様の性質上、特定方向に割れやすい特徴があり、「真っ黒な墨がすりやすい」といわれています。
上記の例のように、硯の模様や石の性質によって墨のできが変わるため、デザインにも注目して選びましょう。
(6)鋒鋩(ほうぼう)の細かさもチェック
石製の硯を選ぶ際は、鋒鋩(ほうぼう)の細かさもチェックしましょう。
石製の硯の表面には、「鋒鋩」といわれる小さな凹凸があります。鋒鋩は、石英や銅、鉄などの小さな結晶でできており、鋒鋩の粗さや細かさによって墨のすりやすさが変わってくるのです。
鋒鋩が粗く、たくさんありすぎると、墨が早くとけてドロリとした墨になってしまう傾向に。ドロリとした墨は文字がかすれやすく、うまく文字を書くのが難しくなってしまいますよ。
逆に細かすぎると、いつまでも墨が溶けず、つややかな墨色が出ない傾向にあるので注意しましょう。鋒鋩の細かさはちょうどよく、品質がよいものを選ぶことが大切です。
(7)専用ケースや化粧箱入りの硯もおすすめ
高級な硯は、専門ケースや化粧箱に入った高級な硯もあります。
きれいな専門ケースや化粧箱に入っている硯は、見た目も豪華な印象になり、開けるたびに嬉しくなるものです。
保管や持ち運びをするときにも便利で、書道をする方へのプレゼントにもおすすめですよ。
高級な硯(すずり)のおすすめ10選
ここからは、高級な硯(すずり)のおすすめ10選をご紹介します。
(1)寿香堂「端渓硯坑仔巌 角型 7吋 硯」
価格(税込) | 28,000円 |
産地 | 中国産 端渓硯 |
素材 | 天然石 |
サイズ | 7吋 11.2cm×17.6cm×2.1cm |
重量 | – |
寿香堂の「端渓硯行使巌(たんけいけんこうしがん)」は、硯の中でも最高峰といわれる端渓硯。
大きさは、半紙サイズの漢字や大型のかな書道にぴったりな7吋です。
端渓硯行使巌の鋒鋩(ほうぼう)は、繊細で硬いため、墨の発色のよさが魅力。墨の粘り気も少なく、墨色にこだわりのある方におすすめします。
硯を傷から守る木箱と、重厚感ある専用箱付きで高級感も抜群なので、プレゼントなどにも喜ばれますよ。
(2)筆匠朱陽堂「宮城 雄勝 天然石硯 五三寸」
価格(税込) | 33,440円 |
産地 | 宮城県 |
素材 | 天然雄勝玄昌石 |
サイズ | 154cm×95cm×34cm |
重量 | 約900g |
「宮城 雄勝 天然石硯 五三寸」は、宮城県産の雄勝硯(おがつすずり)です。雄勝硯は、室町時代ごろから約600年の歴史と伝統が引き継がれている硯として有名ですね。
雄勝硯の原石は「伝昌石」とも呼ばれていて、粒子の均質さや光沢などが硯に適しているのが特徴。
圧縮や曲げに強い石質なので、経年劣化しにくく長く使えるのも嬉しいですね。
(3)雄勝硯「雄勝硯 加厚自然型5寸 雄勝石」
価格(税込) | 39,500円 |
産地 | 宮城県石巻市雄勝町産 |
素材 | 天然雄勝玄昌石 |
サイズ | 155×150×65mm |
重量 | – |
雄勝硯の「加厚自然型6寸 雄勝石」は、採石されたままの雄勝石の原石を硯として製作されており、半紙の漢字を書く際にぴったりの5吋です。
雄勝石は、粒子が均等で光沢があり、吸水性が低いので経年劣化に強いのが特徴。
熟練の職人が一つひとつ彫り上げた一点ものなので、使う度に愛着が沸きますよ。
鋒鋩の粗さ・繊細さ・硬さなども絶妙なバランスで、安定感のあるすり心地が楽しめる逸品です。
(4)寿香堂「歙州硯 金星竹葉紋硯 天然石」
価格(税込) | 77,000円 |
産地 | 中国産 歙州硯 |
素材 | 天然石 |
サイズ | 13cm×9.4cm×1.2cm |
重量 | 約330g |
寿香堂の「歙州硯 金星竹葉紋硯 天然石」は、中国の三大硯といわれる歙州硯(くうじゅうけん)です。
黒・灰緑色などの透き通るような石の模様と、金潜の煌びやかなデザインが芸術的ですよね。
水に浸すとさらに美しい石紋が浮かび上がるので、美術工芸品としても非常に奥深さを感じられる逸品です。
眺めているだけで芸術作品のように楽しめるため、コレクションとしてもおすすめですよ。
(5)筆匠庵「共蓋天然型 小四六サイズ 雄勝 純国産硯」
価格(税込) | 44,000円 |
産地 | 宮城県石巻市雄勝町産 |
素材 | 天然雄勝玄昌石 |
サイズ | 16.5cm×10.8cm×3.9cm |
重量 | 約1,250g |
筆匠庵の「共蓋天然型 小四六サイズ 雄勝 純国産硯」は、磨墨に適した天然雄勝玄昌石で作られた逸品です。
熟練の硯職人が一つひとつ丁寧に手がけており、一硯ごとに多少見た目が異なるのが魅力。世界に一つだけの硯が手に入りますよ。
また、蓋付きで墨液の水分蒸発を防いでくれるため、長い時間書道をする方におすすめです。
墨池の深さがしっかりあるのでたっぷりと墨液を溜めることができ、書き初めなどの大型の漢字を書くときにぴったりですよ。
(6)谷口文栄堂「汾河澄泥硯 楕円彫花 8吋」
価格(税込) | 19,008円 |
産地 | 中国産 汾河澄泥硯 |
素材 | 汾河の泥土 |
サイズ | 15cm×20.2cm×2.6cm |
重量 | – |
谷口文栄堂「汾河澄泥硯 楕円彫花 8吋」は、中国の山西省を南北に流れる大きな川・汾河(ふんが)の泥土を焼成して作られた澄泥硯(ちょうでいけん)。
泥中に含まれる成分の二酸化硅素60%以上のミクロの鋒鋩があり、硬い墨でも細かく発墨させるのが特徴です。
焼成して作られる硯のため、表面の色が一つひとつ絶妙に異なるのも芸術的ですよね。
8吋と大きめサイズなので、大型の漢字などを書く際に適しています。木箱入りで持ち運びにも便利で、ギフトにも最適ですよ。
(7)ミフジ「硯 雨畑硯 雨畑真石 520」
価格(税込) | 12,100円 |
産地 | 山梨県南巨摩郡早川町雨畑地方 |
素材 | 雨畑真石 |
サイズ | 11cm×10.2cm×2.2cm |
重量 | – |
ミフジの「硯 雨畑硯 雨畑真石520」は、硯刻士の望月玉泉氏が彫った名硯のひとつです。縦の長さ11cmの手のひらサイズで、小筆用にぴったりですよ。
雨畑真石(あめはたしんせき)と呼ばれる天然石を使用しています。
粘板岩で粒子が細かく、水持ちがいいのが特徴で、愛好家から硯に最適な石質だと高く評価されていますよ。
また、雨畑真石の鋒鋩は非常にきめ細かく、墨が細かくなめらかに下ります。適度な硬度もあり、鋒鋩がすり減りにくいので、長く愛用できる逸品でしょう。
(8)中国貿易公司「端渓硯 宋坑 松」
価格(税込) | 15,400円 |
産地 | 中国産 端渓硯 |
素材 | 天然石 |
サイズ | 約155×108×20mm |
重量 | – |
中国貿易公司「端渓硯 宋坑 松」は、中国広東省広州の肇慶(ちょうけい)という町の谷川端渓で採られた原石を使用している硯です。
紫色を基調とした石が特徴的で、発墨の範囲や良さも抜群です。端渓硯は、硯の中でも最高峰といわれており、愛好家たちに最高級の硯として親しまれています。
硯の上部には、縁起のよい松の彫刻が施されていて、木製入りの高級感ある商品です。おめでたいシーンなどに贈れば、喜ばれること間違いなしです◎
(9)雄勝硯「二面硯(縦) 雄勝石 玄昌石 天然石」
価格(税込) | 14,750円 |
産地 | 宮城県石巻市雄勝町産 |
素材 | 天然雄勝玄昌石 |
サイズ | 15.4cm×7.4cm×2.3cm |
重量 | – |
雄勝硯「二面硯(縦)」は、宮崎県石巻氏雄勝町産の玄昌石を使用し、熟練の職人が一つひとつ彫り上げた一点ものの硯です。
こちらの硯は二面硯となっており、2色に分けて使えるのが魅力。朱墨と黒墨など、違う色の墨液を作りたい場合に最適ですよ。
雄勝硯の鋒鋩は、粗さ・細さや硬さ・柔らかさがちょうどよいバランスで、品質を重視する方におすすめの硯です。
(10)アスカ「端渓硯 宋坑 風字硯 6インチ木箱入り」
価格(税込) | 8,580円 |
産地 | 中国産 端渓硯 |
素材 | 天然石 |
サイズ | 15.2cm×14.2cm×2cm |
重量 | 約850g |
アスカの「端渓硯 宋坑 風字硯」は、中国の谷川「端渓」で採られた原石を使用している硯です。紫を基調とした美しい石質が特徴で、非常に希少価値が高いことで知られていますよ。
半紙サイズや大型のかな文字などに適した6吋で、850gと重量感もあるため、安定感のある使い心地も魅力ですよ。
木箱入りで高級感があり、値段も一万円程度と手を出しやすい価格なので、書道が趣味の友人へのプレゼントなどにおすすめです。
高級な硯(すずり)の比較一覧
商品名 | 商品イメージ画像 | 価格(税込) | 産地 | 素材 | サイズ | 重量 |
---|---|---|---|---|---|---|
寿香堂 「端渓硯坑仔巌 角型 7吋 硯」 | 28,000円 | 中国産 端渓硯 | 天然石 | 7吋 11.2cm×17.6cm×2.1cm | – | |
筆匠朱陽堂 「宮城 雄勝 天然石硯 五三寸」 | 33,440円 | 宮城県産 | 天然雄勝玄昌石 | 154cm×95cm×34cm | 約900g | |
雄勝硯 「雄勝硯 加厚自然型 6寸 雄勝石」 | 39,500円 | 宮城県石巻市雄勝町産 | 天然雄勝玄昌石 | 155×150×65mm | – | |
寿香堂 「歙州硯 金星竹葉紋硯 天然石」 | 77,000円 | 中国産 歙州硯 | 天然石 | 13cm×9.4cm×1.2cm | 約330g | |
筆匠庵 「共蓋天然型 小四六サイズ 雄勝 純国産硯」 | 44,000円 | 宮城県石巻市雄勝町産 | 天然雄勝玄昌石 | 16.5cm×10.8cm×3.9cm | 約1,250g | |
谷口文栄堂 「汾河澄泥硯 楕円彫花 8吋」 | 19,008円 | 中国産 汾河澄泥硯 | 汾河の泥土 | 15cm×20.2cm×2.6cm | – | |
ミフジ 「硯 雨畑硯 雨畑真石 520」 | 12,100円 | 山梨県南巨摩郡早川町雨畑地方 | 雨畑真石 | 11cm×10.2cm×2.2cm | – | |
中国貿易公司 「端渓硯 宋坑 松」 | 15,400円 | 中国産 端渓硯 | 天然石 | 15cm×20.2cm×2.6cm | – | |
雄勝硯 「二面硯(縦) 雄勝石 玄昌石 天然石」 | 14,750円 | 宮城県石巻市雄勝町産 | 天然雄勝玄昌石 | 15.4cm×7.4cm×2.3cm | – | |
アスカ 「端渓硯 宋坑 風字硯 6インチ木箱入り」 | 8,580円 | 中国産 端渓硯 | 天然石 | 15.2cm×14.2cm×2cm | 約850g |
高級な硯(すずり)のお手入れ方法
高級な硯を長く使うためには、使った後のお手入れや保管方法が大切です。
使った硯を放置してしまうと残った墨が固まってしまい、墨をうまくすれなくなってしまいます。
墨池に残った墨は、半紙などを使ってやさしく拭き取りましょう。この時にゴシゴシと強く拭き取ると、紙の繊維が硯にくっついてしまう恐れがあるため注意してくださいね。
その後、流水にあててやわらかいスポンジなどで擦ってきれいにします。洗い終えたらやわらかい布で水分を拭き取り、十分に乾燥させてからしまってくださいね。
高級な硯(すずり)で書道の時間をより贅沢なものにしよう
高級な硯は、硯に合った天然石で作られたものや、伝統工芸品として長年親しまれてきたものなど魅力的な商品が豊富です。
硯にこだわることで、墨がすりやすくなります。また、良い墨で書道の時間をより贅沢で豊かなものにできますよ。
ぜひ、この機会に一生使えるような、高級な硯を見つけてみてくださいね。